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📚 ISO45001完全実務ガイド
📍現在地:支援編(2/5)
✓ 第31回 7.1 資源
● 第32回 7.2 力量 ← 今回
○ 第33回 7.3 認識
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会社で安全衛生教育を実施すると、受講者名簿や修了証が残ります。
そのため、
「教育を受けたので、この人には力量がある」
「資格証を持っているので、安全に作業できる」
と判断してしまうことがあります。
しかし、教育へ参加したことと、実際の作業を安全に行えることは同じではありません。
説明を聞いていても、異常時に機械を止められないかもしれません。
試験には合格していても、現場の危険な変化に気づけないかもしれません。
ISO45001の7.2「力量」で重要なのは、教育を実施したという事実だけではありません。
その人が必要な知識や技能を仕事で使い、安全衛生上必要な結果を出せる状態にすることが重要です。
本稿はISO45001:2018を対象としています。ISOの公式情報では、2018年版は2024年に確認され、2026年7月19日時点では現行規格ですが、改訂作業が進められています。公開前及び将来の更新時には、最新版の発行状況を再確認する必要があります。(ISO)
この記事で分かること
この記事では、次のことが分かります。
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ISO45001でいう力量の意味
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7.2で組織が行うこと
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資格、教育及び力量の違い
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必要な力量を考える三つの範囲
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教育後の有効性を確認する方法
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力量の証拠として残す記録
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力量管理を行う実務7ステップ
この記事の結論
ISO45001の力量管理は、教育を実施して記録を残すだけの活動ではありません。
組織は、次の流れをつくる必要があります。
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仕事や役割に必要な力量を決める
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現在、その力量が備わっているか確認する
-
不足している場合は、教育、訓練、指導、配置変更などの措置をとる
-
措置によって本当にできるようになったか評価する
-
必要な力量を維持する
-
力量があることを示す証拠を残す
特に重要なのは、教育を行ったかではなく、教育などによって必要な力量を獲得できたかを確認することです。

ISO45001でいう「力量」とは何か
「力量」という言葉は、日常ではあまり使われません。
筋力や体力を意味する言葉のように感じる人もいるかもしれません。
ISO45001の実務では、力量を次のように考えると分かりやすくなります。
担当する仕事を安全に行うために、必要な知識や技能を実際に使えること
知識を持っているだけでは足りません。
例えば、機械の非常停止ボタンの位置を知っていても、どのような状況で押すべきか判断できなければ、必要な力量があるとは判断しにくくなります。
反対に、学歴や資格がなくても、適切な指導と実務経験によって、安全に作業できる力量を備えている場合があります。
ただし、法令によって免許、技能講習、特別教育などが求められている業務については、その法的要求事項を満たす必要があります。
力量は、次のような要素を組み合わせて考えます。
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知識
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技能
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教育歴
-
訓練歴
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実務経験
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資格
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異常時の判断能力
-
危険源やリスクを理解する能力
どの要素が必要かは、担当する仕事、役割及び安全衛生リスクによって変わります。
7.2で組織が行う四つのこと
7.2の内容は、おおむね次の四つに整理されています。
1.必要な力量を決める
最初に、組織は仕事や役割ごとに必要な力量を明確にします。
例えば、次のような人では必要な力量が異なります。
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現場で設備を操作する人
-
作業を指揮する監督者
-
リスクアセスメントを行う人
-
労働災害を調査する人
-
緊急時に対応する人
-
内部監査を行う人
-
教育を担当する人
-
設備を保守する人
「全従業員に安全教育を行う」という整理だけでは不十分です。
誰が、どの仕事を、どのような条件で行うのかを確認し、その役割に必要な力量を決めます。
2.必要な力量を備えていることを確実にする
必要な力量を決めた後は、担当者がその力量を備えているか確認します。
確認材料には、次のようなものがあります。
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保有資格
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教育の受講歴
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実務経験
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作業の観察結果
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技能確認の結果
-
上司や指導者による評価
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試験や面談の結果
-
過去の作業実績
確認方法は一つに限定されません。
作業の難しさやリスクに応じて、複数の方法を組み合わせます。
3.力量を獲得・維持する措置をとり、有効性を評価する
力量が不足している場合は、その不足を補う措置をとります。
具体的には、次のような方法があります。
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教育を行う
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実技訓練を行う
-
経験者による指導を行う
-
OJTを行う
-
外部研修へ参加させる
-
一定期間、経験者の監督下で作業させる
-
より力量のある人を採用する
-
担当業務や配置を変更する
ここで終わりではありません。
措置をとった後に、本当に必要な力量が身についたかを確認します。
これが「措置の有効性評価」です。
4.力量の証拠となる情報を残す
力量を備えていることを説明できるように、適切な文書化した情報を保持します。
例えば、次のような記録です。
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資格一覧
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資格証や修了証の写し
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教育受講記録
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実技評価表
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作業観察記録
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力量評価表
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スキルマップ
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作業認定者一覧
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指導者による確認記録
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再教育及び再評価の記録
ISO45001は、すべての組織へ同じ名称や様式の力量表を要求しているわけではありません。
組織が必要な力量を管理し、その結果を説明できる形式であれば、既存の人事制度、資格管理表、教育記録などを活用できます。
必要な力量を考える三つの範囲

力量を資格だけで整理すると、必要な能力を見落とすことがあります。
実務では、次の三つに分けると整理しやすくなります。
1.法令及びその他の要求事項を満たす力量
日本の労働安全衛生法令では、一定の危険・有害業務について、免許、技能講習、特別教育などが必要になります。
例えば、就業制限の対象業務では、必要な免許や技能講習を修了していない人を業務へ就かせることはできません。
また、一定の危険・有害業務では、事業者が特別教育を行う必要があります。(厚生労働省)
ただし、法令上の資格を持っていることは、力量確認の出発点です。
資格を取得した後も、その事業場の設備、作業手順、取り扱う物質及び異常時対応を理解する必要があります。
2.ISO45001の仕組みを運用するための力量
現場作業者だけでなく、マネジメントシステムを運用する人にも力量が必要です。
例えば、次の業務です。
-
危険源を特定する
-
リスクを評価する
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法的要求事項を確認する
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労働災害やヒヤリハットを調査する
-
内部監査を行う
-
教育を計画する
-
緊急事態対応を計画する
-
是正処置の有効性を確認する
内部監査員について考えると、ISO45001の研修を受けただけでは十分とは限りません。
質問の仕方、証拠の確認方法、現場観察、リスクの見方、不適合の判断なども必要になります。
3.担当する作業や職場の危険源に対応する力量
法令上の資格が定められていない作業でも、安全衛生上必要な力量があります。
例えば、次のような能力です。
-
機械の異常音に気づく
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通常状態と異常状態を区別する
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作業を中止すべき条件を判断する
-
必要な連絡を行う
-
周囲の人を危険区域へ入れない
-
定められた手順で設備を停止する
-
作業条件の変化に気づく
「資格が必要ない仕事だから、力量管理も必要ない」ということではありません。
その仕事が労働安全衛生パフォーマンスへ影響する可能性があるなら、必要な力量を検討します。
変更があったときは力量も見直す
必要な力量は、一度決めれば終わりではありません。
次のような変更があれば、力量を見直す必要があります。
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新しい設備を導入した
-
作業方法を変更した
-
原材料や化学物質を変更した
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新しい法令要求が適用された
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人員配置や役割を変更した
-
自動化やデジタル化を進めた
-
災害やヒヤリハットが発生した
-
手順どおりに作業できていないことが分かった
変更管理では、設備や手順だけでなく、その変更に対応できる人がいるかを確認します。
変更後の設備を安全に使う力量が整っていない場合は、設備が完成していても、安全な運用を開始できません。
資格・教育・力量の違い
資格、教育及び力量は、互いに関係しますが同じものではありません。

| 項目 | 意味 | 確認例 |
|---|---|---|
| 資格 | 法令、社内制度、業界制度などで定められた要件を満たしていること | 免許証、技能講習修了証、社内認定 |
| 教育・訓練 | 知識や技能を身につけるための手段 | 座学、実技訓練、OJT、外部研修 |
| 経験 | 実際の業務を通じて知識や技能を身につけた経歴 | 従事期間、担当実績、指導経験 |
| 力量 | 必要な知識や技能を実際の仕事で使える状態 | 作業観察、実技評価、異常時対応 |
教育を受けたことは、力量を身につけるための手段です。
教育への出席そのものが、力量を備えたことの最終的な証明になるとは限りません。
7.1「資源」、7.2「力量」、7.3「認識」の違い
箇条7の各要求事項は、互いに関係しています。

| 箇条 | 主な役割 | 実務上の問い |
|---|---|---|
| 7.1 資源 | 必要な人、時間、予算、設備、情報などを用意する | 教育や安全活動を行うための条件があるか |
| 7.2 力量 | 必要な仕事を適切に行える人を確保する | その人は実際にできるか |
| 7.3 認識 | 方針、リスク、自分の役割などを理解させる | なぜ行うのかを理解しているか |
例えば、非常停止の操作ができることは力量です。
非常停止が必要な状況や、停止をためらうことで生じる結果を理解していることは認識です。
訓練時間、指導者、訓練設備及び予算を用意することは資源です。
実務例:自動搬送設備を導入した物流センター
ここでは、物流センターへ自動搬送設備を導入した事例を考えます。
この設備は、倉庫内を自動で移動し、保管場所と作業場所の間で荷物を運びます。
設備を導入しただけでは、安全に運用できません。
人と自動搬送設備が同じ区域で作業するため、接触、挟まれ、予期しない起動などを考える必要があります。

必要な力量を役割ごとに決める
設備を操作する人
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起動及び停止の手順
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警報表示の意味
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非常停止の方法
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立入区域のルール
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異常時の連絡方法
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復旧を自分で行ってよい範囲
現場監督者
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人と設備の動線管理
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作業変更時のリスク確認
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作業を中止する判断
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異常発生時の指揮
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ヒヤリハットの確認と再発防止
保全担当者
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設備の停止及びエネルギー遮断手順
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残留エネルギーの確認
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センサーや安全装置の確認
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復旧後の試運転
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メーカーが定めた保守要領
力量を身につける措置
組織は、メーカーによる説明だけで終わらせず、次の措置を組み合わせました。
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操作方法の座学
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実機を使った操作訓練
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警報が出た場合の対応訓練
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非常停止の実技
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経験者の監督下で行う試運用
-
異常時の判断を確認する面談
有効性を評価する
教育終了後、受講者名簿を作成しただけではありません。
指導者が実際の操作を観察し、次の点を確認しました。
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定められた位置から設備を操作できるか
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異常時に作業を中止できるか
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許可されていない復旧を行わないか
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周囲の人へ必要な連絡ができるか
-
安全装置を無効化しないか
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自分で判断できない場合に上司へ連絡できるか
確認結果を力量評価表へ記録し、合格した人だけを設備の操作担当者として登録しました。
この事例のポイントは、教育へ参加した人を一律に「力量あり」としなかったことです。
力量管理の実務7ステップ

ステップ1.安全衛生へ影響する仕事と役割を洗い出す
現場作業だけでなく、管理、監督、計画、点検、教育、監査、調査及び緊急時対応を含めます。
ステップ2.役割ごとに必要な力量を決める
必要な資格、知識、技能、経験及び判断能力を決めます。
「十分な知識があること」のような抽象的表現だけでなく、できるだけ確認可能な表現にします。
例として、「設備を理解している」ではなく、「異常表示を確認し、定められた停止及び連絡ができる」とします。
ステップ3.現在の力量を確認する
資格証、経験、面談、試験、実技及び作業観察などを使って確認します。
自己申告だけで判断せず、客観的な確認方法を組み合わせます。
ステップ4.不足している力量を明確にする
必要な力量と現在の力量を比較します。
不足がある場合は、その人を直ちに単独作業へ就かせず、監督下での作業、担当範囲の限定なども検討します。
ステップ5.力量を獲得する措置をとる
教育、実技訓練、OJT、指導、外部研修、採用、配置変更などから適切な方法を選びます。
すべての不足を座学教育だけで解決しようとしないことが重要です。
ステップ6.措置の有効性を評価する
実技、作業観察、口頭確認、試験、模擬訓練、一定期間の作業実績などによって評価します。
評価方法は、作業の危険性と必要な力量に合わせます。
ステップ7.力量を維持し、証拠を残す
資格の更新、再教育、定期訓練、変更時教育、力量の再評価を行います。
力量表、評価記録、資格一覧、認定者一覧などを更新し、誰が何をできるか分かる状態を維持します。
教育の有効性はどのように確認するか
有効性評価は、すべて筆記試験で行う必要はありません。
必要な力量に応じて方法を選びます。

| 必要な力量 | 有効性評価の例 |
|---|---|
| 手順やルールの知識 | 筆記試験、口頭質問 |
| 機械操作 | 実技確認、作業観察 |
| 異常時対応 | 模擬訓練、状況判断の質問 |
| リスクアセスメント | 演習結果、現場での実施状況 |
| 内部監査 | 監査への同行、監査記録の確認 |
| 作業指揮 | 実際の指示、配置及び判断の観察 |
| 緊急時対応 | 避難訓練、通報訓練、初動確認 |
満点の筆記試験に合格しても、実際の操作を誤る場合があります。
反対に、実技ができても、異常の意味や中止条件を理解していない場合があります。
知識と実技の両方が必要な仕事では、両方を確認します。
力量不足を教育だけで解決しない
力量管理は重要ですが、危険源を教育だけで管理してはいけません。
ISO45001では、危険源の除去、より危険性の低いものへの代替、工学的対策、管理的対策、個人用保護具という優先順位でリスク低減を考えます。
教育訓練は、主に管理的対策に位置づけられます。
例えば、機械へ手を入れなければならない危険な作業がある場合、
「手を入れないように教育する」
だけで終わらせるべきではありません。
可能であれば、設備構造、ガード、インターロック、停止方法などを見直します。
力量は、安全な設備や作業方法を適切に使うために必要です。
危険な仕組みを、人の注意力だけで補うための要求事項ではありません。
よくある誤解
誤解1.資格を持っていれば力量がある
資格は重要な証拠ですが、その事業場の設備や作業条件に対応できるかは別に確認する必要があります。
誤解2.教育へ出席すれば力量がある
出席記録は教育を行った証拠です。
必要な仕事ができることの証拠とは限りません。
誤解3.力量管理の対象は現場作業者だけである
管理者、監督者、安全衛生担当者、内部監査員、教育担当者なども対象になります。
誤解4.一度認定すれば再評価は必要ない
設備、作業、法令、役割、本人の状況などが変われば、力量を見直します。
誤解5.力量表という様式を必ず作らなければならない
特定の名称や様式が要求されているわけではありません。
既存の資格管理表、教育記録、職務基準などを組み合わせることもできます。
誤解6.外部委託すれば力量を確認しなくてよい
外部委託先や請負者へ業務を任せても、必要な力量を契約条件、選定基準、資格確認、作業前打合せなどで確認することが重要です。
ただし、発注者が請負者の労働者へ直接指揮命令してよいという意味ではありません。
契約関係、法的責任及び指揮命令関係を区別して管理します。
実践するときの注意点
力量管理を実施するときは、次の点に注意します。
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資格一覧だけで終わらせない
-
教育回数だけを評価指標にしない
-
評価基準を曖昧にしない
-
評価者にも必要な力量を持たせる
-
不合格者を責める制度にしない
-
力量不足があれば作業範囲や監督方法を見直す
-
設備や作業の変更時に再確認する
-
教育で設備上の欠陥を補おうとしない
力量不足は、個人だけの問題とは限りません。
教育時間が与えられていない、指導者がいない、手順が分かりにくい、設備が複雑すぎるなど、組織側の資源や仕組みに原因がある場合もあります。
FAQ
Q1.力量表やスキルマップは必ず必要ですか?
必須の様式ではありません。
ただし、誰にどの力量が必要で、現在どの程度備わっているかを一覧で管理する方法として有効です。
Q2.教育後は必ず試験を行う必要がありますか?
必ずしも筆記試験である必要はありません。
実技、作業観察、面談、模擬訓練など、確認したい力量に合った方法を選びます。
Q3.長い実務経験があれば教育を省略できますか?
経験によって必要な力量が確認できる場合はあります。
ただし、法令で教育が義務づけられている業務や、設備・手順が変更された場合は、経験だけで省略できるとは限りません。
Q4.社内資格は力量の証拠になりますか?
適切な基準と評価にもとづく社内資格であれば、力量を示す証拠の一つになります。
認定基準、評価方法及び認定者を明確にしておくことが重要です。
Q5.力量の記録は何年間保存すればよいですか?
ISO45001の7.2自体では、一律の保存年限を示していません。
適用法令、資格制度、顧客要求、社内規定及び業務上必要な期間を確認して決めます。
Q6.派遣社員や請負者も対象になりますか?
その人の活動が組織の労働安全衛生パフォーマンスへ影響する場合は、適切な管理が必要です。
雇用関係、派遣契約、請負契約及び指揮命令関係を踏まえ、受入条件、資格確認、情報提供などを整理します。
Q7.力量評価で不合格になった人はどうすればよいですか?
必要な再教育、追加訓練、監督下での作業又は配置の見直しを行います。
不足した状態で危険な単独作業へ就かせないことが重要です。
まとめ
ISO45001の7.2「力量」は、教育記録や資格証を集めるだけの要求事項ではありません。
重要なのは、次の流れを機能させることです。
-
必要な力量を決める
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現在の力量を確認する
-
不足を明確にする
-
教育、訓練、経験などで不足を補う
-
本当にできるようになったか評価する
-
必要な力量を維持する
-
力量の証拠を残す
資格は力量を示す重要な証拠ですが、資格だけで個別の設備や作業を安全に行えるとは限りません。
また、教育を実施したことと、力量を獲得したことも同じではありません。
「何を教えたか」だけでなく、
「その人が実際に何をできるようになったか」
を確認することが、7.2を実務で機能させるポイントです。
次回は、7.3「認識」について解説します。
力量が「できること」を扱うのに対し、認識では「なぜ必要なのかを理解していること」を中心に整理します。
注意書き
この記事は、安全衛生及びISO45001に関する一般的な情報提供を目的としています。個別の事業場における最終判断を代替するものではありません。実際の対応は、最新版の規格、適用法令、行政情報、社内ルール及び現場状況を確認し、必要に応じて管理者又は専門家の判断に基づいて行ってください。
要約
ISO45001の7.2「力量」は、安全衛生へ影響する仕事を行う人について、必要な力量を決定し、教育・訓練・経験などによって力量を確保・維持し、その措置の有効性を評価して証拠を残すことを求めています。資格や教育への参加だけでなく、実際の作業、異常時対応及び判断ができるかを確認することが重要です。



















































