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📚 ISO45001完全実務ガイド
📍現在地:要求事項編(14/28)
✓ 第25回 6.1.2.2 労働安全衛生リスク及びその他のリスクの評価
● 第26回 6.1.2.3 労働安全衛生機会及びその他の機会の評価 ← 今回
○ 第27回 6.1.3 法的要求事項及びその他の要求事項の決定
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第25回では、特定した危険源について、働く人がけがや健康障害を受ける可能性を評価する方法を説明しました。
リスクを評価した結果、組織が決めた基準で受け入れられると判断できれば、現在の管理策を継続する場合があります。
一方、受け入れられないと判断した場合は、そのまま放置できません。
追加の管理策を考え、リスクを下げる必要があります。
ここで、次のような疑問が出てきます。
「リスクを下げるための管理策が、ISO45001でいう機会なのか」
「リスクが受け入れられるなら、改善は必要ないのか」
「改善案は、すべて機会として扱うのか」
今回説明する6.1.2.3では、働く人の安全と健康をさらに良くする可能性と、安全衛生を管理する仕組みを良くする可能性を評価します。
ただし、リスクを受け入れられる状態にするために必要な管理策と、さらに良い状態を目指す機会は、同じ意味ではありません。
この記事で分かること
この記事では、次のことが分かります。
-
ISO45001における機会の意味
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労働安全衛生機会とその他の機会の違い
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リスク評価と機会評価の違い
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リスクが受け入れられる場合にも機会を考える理由
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リスクが受け入れられない場合の管理策との関係
-
管理策の優先順位と機会の関係
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対策実施前のリスク評価が必要な理由
-
対策実施後に有効性を確認する理由
-
機会の評価を実務へ落とし込む7ステップ
この記事の結論
6.1.2.3では、次の2種類の機会を評価します。
-
働く人の安全と健康を直接良くする労働安全衛生機会
-
安全衛生を管理する仕組みを良くするその他の機会
重要なのは、次の区別です。
-
リスクが受け入れられない場合
→ 必要な管理策を実施してリスクを下げる -
リスクが受け入れられる場合
→ 現状を維持できる場合があるが、さらに良くする機会がないとは限らない
つまり、機会の評価は、リスク評価の結果が悪かったときだけ行う活動ではありません。
現在のリスクが管理されていても、設備更新、自動化、作業方法の変更、働く人の参加などによって、より安全で健康的な職場へ改善できる可能性があります。

ISO45001でいう「機会」とは何か
機会とは、現在より良い状態にできる可能性です。
ISO45001では、次の二つに分けて考えます。
| 種類 | 改善する対象 | 具体例 |
|---|---|---|
| 労働安全衛生機会 | 働く人の安全と健康 | 危険作業の自動化、有害性の低い物質への変更、作業姿勢の改善 |
| その他の機会 | 安全衛生を管理する仕組み | 購入前審査、災害情報の共有、教育方法、働く人の参加 |

ISO45001を担当するISO/TC 283の公式FAQでも、労働安全衛生機会は労働安全衛生パフォーマンスの改善に関係し、その他の機会は労働安全衛生マネジメントシステムの改善に関係すると説明されています。(ISO)
労働安全衛生機会の例
例えば、次のようなものです。
-
危険な手作業を自動化する
-
高所で行っている作業を地上から行えるようにする
-
有害性の高い化学物質を、より有害性の低いものへ変更する
-
重量物を人が持ち上げなくてよい設備を導入する
-
人とフォークリフトの通路を分離する
-
清掃や点検を安全な場所から行える設備にする
-
単調な作業や一定速度を強制される作業を見直す
-
作業を働く人の体格や能力に合わせる
新しい設備や工程を計画するときに危険源とリスクを考慮すること、単調な作業を軽減すること、危険性の高い活動を自動化することなどは、公式FAQでも労働安全衛生機会の例として挙げられています。(ISO)
その他の機会の例
例えば、次のようなものです。
-
設備を購入する前に安全性を確認する仕組みを作る
-
設備変更の計画へ働く人が参加する
-
ヒヤリハットを他部門や他事業所へ共有する
-
災害調査の進め方を改善する
-
教育後に理解度や実際の作業を確認する
-
安全パトロールの指摘事項を期限まで管理する
-
経営層が安全衛生の進捗を定期的に確認する
-
安全について意見を言いやすい職場文化を作る
トップマネジメントの関与を見えやすくすること、安全文化や教育を改善すること、災害調査を良くすること、働く人の参加を増やすことなども、その他の機会の例として示されています。(ISO)
リスク評価と機会評価は目的が違う
リスク評価と機会評価は、関係しています。
しかし、目的は同じではありません。
| 評価 | 主な質問 |
|---|---|
| リスク評価 | 現在の危険によって、どの程度のけがや健康障害が起こる可能性があるか |
| 機会評価 | 現在より安全で健康的な状態へ、どのように改善できるか |

例えば、機械の回転部分に安全カバーがあり、現在のリスクが組織の基準で受け入れられる状態だとします。
この場合、現在の安全カバーを維持し、点検を続けるという判断が考えられます。
しかし、次のような改善の可能性が残っているかもしれません。
-
清掃時にもカバーを外さなくてよい設備へ変更する
-
人が危険区域へ入らずに点検できるようにする
-
詰まりを自動で検知する
-
設備の状態を遠隔で確認する
現在のリスクが受け入れられるからといって、機会が存在しないとは限りません。
リスクが受け入れられる場合でも機会を評価する
リスク評価では、現在の管理策を考慮したうえで、追加の取組みが必要かを判断します。
現在のリスクが受け入れられる場合は、現在の管理策を継続できる場合があります。
ただし、次のような考え方には注意が必要です。
リスクが受け入れられる
=これ以上何も改善しなくてよい
ISO45001は、危険源とリスクを管理するだけでなく、労働安全衛生パフォーマンスを継続的に改善するための仕組みです。ISOの公式説明でも、危険源を特定し、リスクを管理し、労働安全衛生パフォーマンスを改善することがISO45001の主要な考え方として示されています。(ISO)
例えば、現在は保護具によって化学物質へのばく露を管理できているとします。
それでも、設備更新の機会に次のことを検討できます。
-
化学物質を使用しない工程へ変更する
-
有害性の低い物質へ変更する
-
密閉設備へ変更する
-
作業を自動化する
このような改善は、現在の管理策を否定するものではありません。
現在の管理を維持しながら、さらに良い状態を目指す活動です。
リスクが受け入れられない場合の対策は任意の機会ではない
リスク評価の結果、現在のリスクが受け入れられないと判断した場合は、追加の管理策が必要です。
この場合、対策を「良い機会があれば取り組むもの」として扱ってはいけません。
そのままでは安全衛生上の問題が残るため、組織は必要な対応を決めなければなりません。
例えば、機械へ巻き込まれる可能性が高く、現在の管理策では十分でない場合を考えます。
この場合に、
「自動化できれば機会として検討する」
「予算が付いたときに改善する」
だけで終わらせることは適切ではありません。
現在のリスクを下げるために、必要な管理策を検討する必要があります。
ただし、同じ改善案が、次の二つの役割を持つ場合はあります。
-
現在の受け入れられないリスクを下げる対策
-
将来の労働安全衛生パフォーマンスを向上させる機会
機会と考えたからといって、必要なリスク低減措置を先送りできるわけではありません。
管理策は優先順位に沿って検討する
リスクを下げるための管理策は、思い付いたものから選ぶのではありません。
ISO45001の8.1.2では、危険源の除去及び労働安全衛生リスクの低減について、管理策の優先順位を考慮します。
基本的な順番は次のとおりです。

-
危険源を除去する
-
危険性又は有害性の低いものへ変更する
-
工学的対策を行い、必要に応じて作業の進め方を見直す
-
手順、教育、表示などの管理的対策を行う
-
個人用保護具を使用する
1.危険源を除去する
最初に考えるのは、危険源そのものをなくせないかということです。
例えば、次のような方法です。
-
危険な作業をなくす
-
高所で行っていた作業を地上で行う
-
有害な化学物質を使う工程を廃止する
-
人が機械内部へ入る作業をなくす
2.危険性又は有害性の低いものへ変更する
危険源を完全になくせない場合は、より危険性又は有害性の低いものへ変更できないか考えます。
例えば、次のような方法です。
-
有害性の高い洗浄剤を、より有害性の低い洗浄剤へ変更する
-
高所で行う作業を、より低い位置で行えるようにする
-
重い材料を、より軽い材料や小分けされた材料へ変更する
代替するときは、新しい材料や作業方法に別の危険がないか確認する必要があります。
3.工学的対策を行う
工学的対策とは、設備や構造によって、人が危険へ近づきにくくする方法です。
例えば、次のような方法です。
-
安全カバーを設置する
-
インターロックを設置する
-
防音囲いを設置する
-
局所排気装置を設置する
-
人と車両の通路を物理的に分離する
-
遠隔操作や自動化を導入する
4.管理的対策を行う
管理的対策とは、ルールや人の行動によってリスクを管理する方法です。
例えば、次のような方法です。
-
作業手順を作る
-
教育を行う
-
立入禁止区域を決める
-
注意表示を設置する
-
作業時間や作業人数を管理する
-
作業許可制度を導入する
5.個人用保護具を使用する
最後に、保護具によって働く人を守ります。
例えば、次のようなものです。
-
保護メガネ
-
防毒マスク
-
防音保護具
-
安全帯又は墜落制止用器具
-
化学防護手袋
保護具は重要な管理策です。
しかし、保護具は正しく選び、正しく装着し、継続して使用しなければ効果を発揮しません。
そのため、最初から「保護具を付ければよい」と考えるのではなく、危険源の除去や設備対策を先に検討します。
機会の評価と管理策の優先順位はどうつながるのか
6.1.2.3の機会評価と、8.1.2の管理策の優先順位は、別の要求事項です。
ただし、実務では強く関係します。
例えば、リスク評価の結果、現在の管理策では不十分だと判断したとします。
追加対策として、次の二つの案が出ました。
-
作業手順を詳しくして教育を増やす
-
設備を自動化して、人が危険区域へ入る作業をなくす
手順と教育は管理的対策です。
自動化によって危険作業をなくすことは、より上位の管理策になります。
さらに、自動化は労働安全衛生パフォーマンスを改善する機会にもなります。
つまり、同じ案が、
-
リスクを下げるための管理策
-
より安全な職場へ改善する機会
の両方になる場合があります。
重要なのは、「機会」という言葉を付けることではありません。
危険源の除去や、より上位の管理策を十分に検討したかどうかです。

対策を決めた後は新しい危険を確認する
良いと思われる対策でも、別の危険を生じさせることがあります。
例えば、安全柵を設置した結果、避難経路が狭くなる場合があります。
自動化設備を導入した結果、次の危険が生じる場合もあります。
-
保全時の挟まれ
-
予期しない起動
-
センサーの誤作動
-
異常時の手作業
-
操作ミス
-
電気や圧力による危険
化学物質を代替した結果、引火性は下がっても、皮膚への有害性が高くなる場合もあります。
したがって、対策を決めたら、実行する前に次の内容を確認します。
-
新しい危険源が生じないか
-
既存の危険源が変化しないか
-
新しい作業や保全作業が発生しないか
-
他の働く人や請負者へ影響しないか
-
緊急時の避難や救助を妨げないか
-
法令や社内基準に適合しているか
インシデントや不適合に対する是正処置として対策を行う場合、10.2との関係で、新しく生じる危険源又は変化した危険源に関係する労働安全衛生リスクを、対策前に評価することが重要です。
一方、すべての変更を10.2だけで管理するわけではありません。
設備、材料、工程、作業方法などの計画した変更については、6.1.1や8.1.3の変更管理との関係も確認します。
対策後は本当に効果があったか確認する
対策は、設置又は実施した時点で終わりではありません。
次の内容を確認します。
-
リスクが予定した水準まで下がったか
-
危険源を除去できたか
-
管理策が正しく使用されているか
-
新しい危険が生じていないか
-
働く人の負担が増えていないか
-
清掃や点検の作業が危険になっていないか
-
働く人から問題が報告されていないか
6.1.4では、リスク及び機会などへの取組みを計画するとき、その取組みの有効性をどのように評価するかも計画することが重要です。
また、インシデントや不適合に対する是正処置については、10.2との関係で、実施した是正処置の有効性を確認します。
例えば、局所排気装置を設置しただけでは、効果が確認できたとはいえません。
次のような確認が考えられます。
-
必要な吸引状態が確保されているか
-
作業者が正しい位置で作業しているか
-
有害物質へのばく露が改善したか
-
日常点検が行われているか
-
故障や能力低下が起きていないか
具体的な確認方法は、法令、設備仕様、測定結果、SDS、社内基準及び専門家の判断に基づいて決める必要があります。
6.1.2.3から対策後の確認までの全体の流れ

実務では、次のようにつながります。
1.危険源を特定する
6.1.2.1で、機械、化学物質、作業方法、作業負荷などの危険源を特定します。
↓
2.リスクを評価する
6.1.2.2で、現在の管理策を考慮し、追加の取組みが必要かを評価します。
↓
3.機会を評価する
6.1.2.3で、働く人の安全と健康又は管理の仕組みを、さらに良くできる可能性を評価します。
↓
4.取組みを計画する
6.1.4で、何を、誰が、いつ、どのように行い、効果をどう確認するかを計画します。
↓
5.管理策を選ぶ
リスクを下げる場合は、8.1.2の管理策の優先順位を考慮します。
↓
6.実施前に新しいリスクを確認する
変更によって、新しい危険源や別のリスクが生じないか確認します。
↓
7.対策を実施する
設備対策、作業変更、教育などを実施します。
↓
8.有効性を確認する
リスクが下がったか、新しい危険が生じていないか、期待した改善効果が得られたかを確認します。
具体例|有機溶剤を使う洗浄作業
部品の洗浄に有機溶剤を使っている作業を例に考えます。

現在の状態
-
作業者が容器へ顔を近づけることがある
-
換気設備の能力が十分か確認できていない
-
作業者は保護具を使用している
-
容器から溶剤がこぼれることがある
リスク評価
現在の管理策では、吸入や皮膚接触のリスクが十分に管理できていないと判断しました。
この場合、必要な対策を「機会があれば行う改善」として扱うことはできません。
追加の管理策を検討します。
管理策の検討
優先順位に沿って、次の順番で考えます。
-
溶剤を使う洗浄工程をなくせないか
-
より有害性の低い洗浄剤へ変更できないか
-
密閉設備や局所排気装置を導入できないか
-
作業手順、教育、立入管理を見直せないか
-
適切な保護具を選定できているか
機会の評価
設備更新の予定があるため、次の機会も評価します。
-
洗浄作業を自動化する
-
密閉式の洗浄設備へ変更する
-
洗浄剤の購入前審査を導入する
-
作業者が設備選定へ参加する
-
他工程でも同じ問題がないか横展開する
自動化や密閉化は、働く人の安全と健康を直接改善する労働安全衛生機会です。
購入前審査や横展開は、安全衛生を管理する仕組みを改善するその他の機会です。
実施前の確認
密閉式設備を導入する前に、次の危険を確認します。
-
内部清掃時のばく露
-
保全時の予期しない起動
-
蒸気や圧力
-
漏えい
-
火災や爆発
-
廃液処理
-
緊急停止の方法
実施後の確認
設備導入後は、次の内容を確認します。
-
作業者のばく露が改善したか
-
容器からのこぼれがなくなったか
-
清掃や保全を安全に行えるか
-
新しい異常やヒヤリハットが発生していないか
-
作業者から使いにくさが報告されていないか
このように、リスク評価、機会評価、管理策の選択、実施前の確認、実施後の有効性評価を一つの流れとして管理します。
機会を評価する実務7ステップ

ステップ1 機会を探す場面を決める
次の場面を、機会を確認するきっかけにします。
-
リスクアセスメント
-
設備や工程の変更
-
新しい設備の購入
-
災害やヒヤリハットの調査
-
安全パトロール
-
内部監査
-
マネジメントレビュー
-
働く人からの改善提案
-
新しい技術や安全情報の入手
ステップ2 機会の候補を集める
安全衛生担当者だけで考えず、作業者、管理監督者、保全担当者、購入担当者などから意見を集めます。
ステップ3 必要な対策と機会を区別する
次の二つを区別します。
-
現在の受け入れられないリスクを下げるために必要な対策
-
現在より良い状態を目指す機会
同じ案が両方に関係する場合は、そのことを記録します。
ステップ4 機会の種類を整理する
次のどちらに該当するか整理します。
-
労働安全衛生機会
-
その他の機会
両方に該当する場合もあります。
ステップ5 安全衛生上の効果を評価する
次の内容を確認します。
-
危険源を除去できるか
-
リスクを下げられるか
-
作業負担を減らせるか
-
働く人に作業を合わせられるか
-
管理の仕組みを改善できるか
ステップ6 新しいリスクと実行条件を確認する
次の内容を確認します。
-
新しい危険源
-
法令及び社内ルール
-
必要な費用
-
必要な人員
-
必要な技術
-
実施期間
-
教育
-
保守や点検
-
働く人の意見
ステップ7 取組計画と有効性評価へつなげる
評価結果を6.1.4の取組計画へつなげます。
計画には、次の内容を含めます。
-
実施内容
-
責任者
-
実施期限
-
必要な資源
-
実施前の確認
-
実施後の効果確認
-
見直し時期
よくある誤解
誤解1 リスクが受け入れられれば何もしなくてよい
現在の管理策を維持できる場合はあります。
しかし、設備更新や新しい技術によって、さらに安全な状態へ改善できる機会が残っている場合があります。
誤解2 リスクが受け入れられない場合の対策も機会である
必要なリスク低減措置を、任意の改善として先送りしてはいけません。
同じ対策が機会の性質を持つことはありますが、必要な対応であることは変わりません。
誤解3 手順と教育を追加すればよい
最初から管理的対策だけを選ぶのではなく、危険源の除去、代替、工学的対策の順に検討します。
誤解4 対策を決めたらすぐに実施すればよい
対策によって新しい危険源や別のリスクが生じることがあります。
実施前に、変更後の作業、保全、異常時、緊急時まで確認します。
誤解5 設備を設置したら改善は完了する
設置しただけでは、効果があったか分かりません。
対策後にリスクが下がったか、新しい危険が生じていないかを確認します。
誤解6 機会はすべて実施しなければならない
すべてを同時に実施する必要があるとは限りません。
安全衛生上の効果、法令、必要な資源、新しいリスクなどを評価して優先順位を決めます。
ただし、法令上必要な措置や、受け入れられないリスクへの対策を任意の機会として先送りしてはいけません。
実務確認チェックリスト
リスク評価との区別
-
現在の管理策を考慮してリスクを評価している
-
追加の対策が必要か判断している
-
必要な対策と任意の改善機会を区別している
-
リスクが受け入れられる場合にも機会を確認している
機会の評価
-
労働安全衛生機会を確認している
-
その他の機会を確認している
-
危険源の除去につながる案を確認している
-
作業を働く人に合わせられないか確認している
-
働く人の意見を反映している
-
設備や工程の変更時に機会を確認している
管理策の選択
-
危険源の除去を最初に検討している
-
危険性又は有害性の低いものへの変更を検討している
-
工学的対策を検討している
-
管理的対策だけで終わっていない
-
保護具だけに依存していない
実施前後の確認
-
対策によって新しい危険が生じないか確認している
-
保全、清掃、異常時及び緊急時を確認している
-
実施後の効果確認方法を決めている
-
リスクが実際に下がったか確認している
-
別のリスクが生じていないか確認している
-
働く人から意見を聞いている
FAQ
Q1.リスクが受け入れられる場合、機会評価は不要ですか
不要とは限りません。
現在の管理策を継続できる場合でも、危険源の除去、自動化、作業負担の軽減など、さらに良くする可能性を評価します。
Q2.リスク低減策と労働安全衛生機会は同じですか
同じとは限りません。
リスク低減策は、現在のリスクを管理するための対策です。
労働安全衛生機会は、現在より安全で健康的な状態へ改善できる可能性です。
同じ案が両方に該当する場合もあります。
Q3.管理策は手順や教育から考えてもよいですか
最初から手順や教育だけに限定するのは適切ではありません。
危険源の除去、代替、工学的対策を先に検討し、その後に管理的対策や保護具を考えます。
Q4.対策実施前にもう一度リスク評価が必要ですか
対策によって危険源が新しく生じる場合や、危険源の状態が変化する場合は、変更後のリスクを事前に確認する必要があります。
適用する条項は、変更の理由や種類によって6.1.1、8.1.3、10.2などが関係します。
Q5.対策後は何を確認すればよいですか
リスクが下がったか、管理策が機能しているか、新しい危険が生じていないか、働く人の負担が増えていないかを確認します。
Q6.保護具を使用してリスクが下がれば十分ですか
保護具は重要ですが、最後に検討する管理策です。
危険源の除去、代替、設備対策ができないかを先に確認します。
Q7.機会は点数化する必要がありますか
すべての組織に共通する点数方式はありません。
高・中・低、優先度区分、文章による評価など、判断理由を説明できる方法を決めます。
Q8.機会を見送る場合も記録した方がよいですか
判断理由、再確認する時期、設備更新時に再検討する条件などを残すことが望まれます。
まとめ
ISO45001の6.1.2.3では、次の二つの機会を評価します。
-
働く人の安全と健康を直接改善する労働安全衛生機会
-
安全衛生を管理する仕組みを改善するその他の機会
今回、特に重要なのは次の点です。
-
リスク評価と機会評価は目的が異なる
-
リスクが受け入れられる場合でも機会は存在する
-
リスクが受け入れられない場合の対策は任意ではない
-
管理策は危険源の除去から順番に検討する
-
手順、教育、保護具だけで短絡的に終わらせない
-
対策前に新しい危険や変化した危険を確認する
-
対策後にリスクが下がったか、有効性を確認する
-
別のリスクが生じていないか確認する
6.1.2.3は、改善案を並べるための要求事項ではありません。
現在のリスクを管理するだけで終わらず、働く人の安全と健康、そして安全衛生を管理する仕組みを、さらに良くする可能性を評価するための要求事項です。
評価した機会は、6.1.4で具体的な取組計画へつなげます。
次回は、組織が守る必要がある法令や、組織が受け入れたその他の要求事項をどのように決定するのか、6.1.3について説明します。
注意書き
この記事は、ISO45001及び労働安全衛生に関する一般的な情報を提供するものです。
個別の現場におけるリスクの受入れ可否、管理策の選定、設備仕様、化学物質の代替、保護具の選定、法令の適用及び健康影響について、最終判断を代替するものではありません。
実際の対応では、正規に入手したISO45001又はJIS Q 45001、最新の法令、行政情報、社内ルール、設備の取扱説明書、SDS及び現場状況を確認してください。
必要に応じて、管理者、安全衛生担当者、設備メーカー、産業保健スタッフ又は安全衛生の専門家へ確認してください。
要約
ISO45001の6.1.2.3は、労働安全衛生機会及び労働安全衛生マネジメントシステムに関するその他の機会を評価するための要求事項である。
労働安全衛生機会とは、危険源の除去、自動化、有害性の低い物質への変更、作業負担の軽減など、働く人の安全と健康を直接改善できる可能性をいう。
その他の機会とは、設備の購入前審査、災害情報の共有、教育、働く人の参加など、安全衛生を管理する仕組みを改善できる可能性をいう。
リスクが組織の基準で受け入れられる場合でも、さらに改善できる機会がないとは限らない。一方、リスクが受け入れられない場合に必要となる対策は、任意の機会として先送りしてはならない。
リスクを低減する管理策は、危険源の除去、代替、工学的対策、管理的対策、個人用保護具の順に検討する。対策を実施する前には、新しく生じる危険源や変化するリスクを確認し、実施後には対策の有効性と新しいリスクの有無を確認する。
個別の設備対策、法令適用、化学物質の代替、保護具及び健康影響については、最新の規格、法令、行政情報、SDS、社内ルール及び現場状況に基づき、人間が最終判断する必要がある。